第1章
持ち合わせにだって限りがある。
でも上手に節約すれば、
一ヶ月くらいは京で生活していけるはず
その間に父様が見つかれば最良だし、
松本先生だって帰ってくるかもしれない。
最悪、父様とも先生とも会えないようなら、
私も家にかえらなければならない……。
『……とにかく
できるだけ、出費は安く抑えないと……』
私は大股で歩き出す。
普段の服装ならできない急ぎ方だけど、
今は袴を着ているから大丈夫。
女の子の一人旅は、
色々な意味で狙われやすいから、
ぱっと見で男の子に見えるよう変装した。
この格好のおかげなのか、
道中は何の問題も起こらなかった。
……だから私は、
変に油断していたのかもしれない。
ここは決して安全ではない、
【京の都】だと知っていたはずなのに。
その危険は現実味を帯びない、
どこか他人事じみたものだった。
浪士『おい、そこの小僧。』
―――実際に、浪士から声をかけられるまでは。