第1章
『でも…。』
……でも、これ以上は待てなかった
……―――
『千鶴』
『父様、どうかしたの?』
父様は少しだけ、申し訳なさそうな顔をする
『……実は、な。
暫くの間、京の都へ行くことになった。』
『またお仕事?』
それは父様が家を空ける回数が、
どんどん増えていった時期だった
『暫くって、どのくらいなの?』
『……それはわからん。
ひと月になるふた月になるか……。』
『……そう……』
私は思わず目を伏せた
……私だって【行かないで欲しい】とか、
わがままを言うような年齢じゃない。
もちろん、少しは寂しかったけど……。
それより私は、父様のことが心配だった。
『気おつけてね、父様
……京の都は、治安が悪いって言うもの。』
父様は表情を緩めて頷いた
『安心しなさい
千鶴が心配しないように、
京にいる間はできる限り手紙を書くよ』
『……うん。約束ね』
……――――