第1章
『……どうしよう、かな……。』
私は今度こそ立ち尽くしていた
ぼんやりと見上げた空は、いつの間にか夕焼けになっていた
京の人は別に意地悪をするでもなく親切に道を教えてくれたんだけど……
『まさか、お留守だなんて……。』
私が京で、頼れる人は――
父様を除けば、松本先生一人だけだった
松本先生は幕府に仕えているお医者様。
私が直接お会いしたことはないのだけれど
父様がとても信頼している人だ
父様が留守の間に困ったことがあれば、まず松本先生を頼るように言われた
でも……。
その松本先生は、しばらく前から京を離れているらしい
『…少し、急ぎ過ぎちゃったのかな』
当然尋ねるのは失礼だし、
事前にお手紙を送ったのだけれど……。
京を離れている先生は当然、
私の手紙なんて読んでいないはず。
先生から返事が届くまで、
ちゃんと待っていれば良かったのかな。