第1章
背筋を這う恐怖が、
ゆっくりと身体に染みこんでいく。
―――怖い。
どうしよう。
……どうしよう。
『……に、逃げなきゃ。』
震える唇は、何とか息を吐きだした。
でも…――
ガシャゃん!
恐怖にしびれたからだはうまく動いてくれなくて、私は木の板を倒してしまう。
浅葱色の羽織を赤黒く染めた彼等が振り返る。
その、人ではない“何か”たちは
新たな獲物を見つけた観喜に打ち震える。
『――――っ嫌。』
今度こそ本当に
『……逃げなくちゃ』
怖い。
私、まだ死にたくない。
なのに、足がもつれて立ち上がれない。
狂った殺意は笑いながら駆けてきた…。
私、死んでしまうのかもしれない。
助けを求める宛もなく、
悲鳴すらあげられないまま私は身体を角張らせる。
――――その時だった。