第3章 求愛
それから二日後に、また風間は屯所に現れた。
先日言った通りに天霧九寿を伴って、正式に有希を妻取りたいと申し出た。
取り敢えず俺の部屋に通して、近藤さんも共に簡単に打ち合わせてから有希を呼ぶ。
部屋に入って来た有希は、並んで正座している俺達を見てかなり気後れしている様子だ。
「ああ……篠森君。こちらの方はご存知だね?」
近藤さんが風間を指して言う。
「はい。先日、ご挨拶させて頂きました。」
「そうかそうか。
………それでだね、実は…こちらの風間殿が君を妻取りたいと…
そう仰っているのだが………」
「…………ええっ?」
有希は本当に驚いたようだ。
まあ…そりゃそうだ。
有希にしてみれば風間は二日前に初めて会った男だ。
そんな奴にいきなり嫁に来いと言われて驚かない訳がねえ。
「あー……うん。
どうやらだねえ…風間殿が、先日此処で
君を見初められたみたいでだなぁ……」
頼むよ、近藤さん。もうちょっと上手く芝居してくれ…。
俺は近藤さんの一挙一動にはらはらしっ放しだった。
「で……でも、ご挨拶しただけで…
きちんとお話させてもらっても無いんですよ?」
有希は尤もな言い分を口にした。
「…世の中には、顔も知らないままで夫婦になる男女も居る。
それに比べれば、俺とお前は二度も顔を合わせているのだから
十分ではないか……?」
当然と言わんばかりの風間の言い種に、有希は黙り込んでしまった。
「我が元に来れば、お前は下らない戯れ事に煩わされる事も無く
ただただ平穏に暮らせば良い。
そして俺の子を産め。……何人でも構わん。」
「……………っ」
顔色一つ変えずそう言い切った風間に、この場に居る全員が絶句した。