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薄桜鬼~最愛~

第2章 濡れた羽根


風間は俺の言った言葉の意味が分からないと言うように表情を歪めた。

「だから…あいつは以前の事を何一つ覚えちゃいねえ。
 そこにお前が出て行って、いきなり連れて行くって話になっても
 あいつには全く心当たりがねえんだよ。」

何となく俺の言う事が分かりかけてきたのか、風間は黙って聞いている。

「正直、俺達だってこのまま此処に有希を置いておくのは
 どうかと思い始めてるさ……
 これから世の中はもっと荒れてくる。
 新選組も京の治安維持なんて呑気な事も言ってられねえ。
 当然、戦に出る事になる。
 …そうなった時に
 有希がお前の元で世の中の血生臭い事から離れて、
 平和に…幸せに暮らすってのも
 悪くねえんじゃねえか……って思うんだよ。」

俺は風間の表情が少し和らいでいるのを見咎めてから改めて問う。

「有希を……幸せにしてくれるんだろう?」

風間は「ふん」と鼻で笑い

「愚問だな。…勿論これ以上無いと言う程、幸せにしてやる。」

と得意気に言った。

「だからよ…きちんと段取りを踏んで、
 筋を通した上で有希に選択させてくれ。
 それであいつがお前を選ぶってんなら俺達は何も文句はねえ。
 ……とにかく今はあいつの心に波風一つ立てたくねえんだよ。」

風間は少し考えるように視線を泳がせた後、

「……了解した。
 俺も有希を無駄に傷付ける事は本意ではない。
 お前のその真摯な態度に免じて、その提案を受け入れてやる。」

と今度こそすっと立ち上がった。

相変わらず上からの物言いだが、風間があっさりと俺の言い分を受け入れてくれた事に驚き……そして感謝した。

「では、近い内に……
 そうだな、天霧を伴って正式に求婚の為に訪れるとしよう。」

「ああ…そうしてくれると助かる。
 但し、あんまりのんびりもしてられねえぞ。
 此処にも有希と添い遂げたいって思ってる奴が居るからな。」

俺がそう言ってにやりと笑うと、風間は不機嫌に顔を歪めて

「どんな奴かは知らんが……負ける気はせんな。」

と、今度は不適に笑った。
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