第8章 君の声
沖田さんに会いたくて仕方がないのに……沖田さんが自室から出て来てくれない日が続いた。
私のせいだって分かっているけど、今更会いたいなんて図々しいとは思うけど……沖田さんへの想いは募るばかりだった。
沖田さんは薬も飲んでくれないし、食事も殆ど取ってくれない…あの人の我儘には付き合いきれないと山崎さんはいつも怒っている。
でも沖田さんの事を本気で心配している山崎さんの気持ちが痛い程伝わって、私も何度か沖田さんの部屋の前まで行ったのだけど…どうしても勇気が出なくて障子戸を開けられないでいた。
その夜もなかなか寝付けずに布団の中でまんじりともしないでいた私に、部屋の外から土方さんが声を掛けてきた。
「有希…まだ起きてるか?」
「はい。」
「夜分にすまねえが、ちょっと俺の部屋まで来てくれ。」
土方さんはそう言って、私の部屋の前から離れた。
私は簡単に身支度を整えて土方さんの部屋へ向かう。
「失礼します。」
そう言って障子戸を開けると、そこに土方さんは居なくて……
斎藤さんが座っていた。
「…………斎藤さん…」
私は駆け寄り、斎藤さんの前に膝を付く。
「元気そうだな。」
懐かしい斎藤さんの声。
「斎藤さんも……。でも、どうして此処に?」
「詳しい事情は話せない。
夜明けまでには此処を出なければならぬので、あまり時間もない。
だが、副長に有希の記憶が戻ったと聞いて、
会わせて貰えるよう頼んだ。」
暫くの沈黙の後、私は意を決して斎藤さんに問い掛けた。
「………平助君は?」
「平助も…元気でやっている。」
「平助君に…伝えたい事があるんです。」
「………何だ?俺が伝えても構わないのならば聞いておくが……。」
「……ごめんなさい……って…」
斎藤さんが驚いたように息を飲んだのが分かった。