第7章 きみが残していったもの
翌日、中庭に居た私の前にまた彼は突然現れた。
「……返事は聞いた。」
「風間さん………」
「思い出したそうだな。」
「………はい。」
「では尚更、俺と共に来い。
此処に居れば、いつまでも過去に囚われる事になる。
俺と共に此処を離れれば、忘れる事も容易いであろう。」
真っ直ぐに私を見据えて語る風間さんに、私は疑問に思っている事を問い掛ける。
「私に…何があったのか知っても……
それでも共に来いと…そう言ってくれるのですか?」
風間さんはいつものように「ふん…」と笑ってから
「当たり前だ……何の問題がある?」
と言ってくれた。
その瞬間、私の目から涙が溢れ落ちた。
「……何故に泣く?」
「嬉しくて……ありがとうございます。
でもやっぱり一緒には行けません。……ごめんなさい。」
私は風間さんに向かって頭を下げた。
「此処に残りたいと…惚れた男が居るからと…
土方が言っていたが、それが理由か?」
「…はい。」
「その男もお前の事を好いているのか?」
「……多分。でも……もう一緒には居られないかもしれません。」