第7章 きみが残していったもの
私が高い所に干してある洗濯物を取り込もうと苦労していると、それを誰かが後ろから軽々と手に取った。
「ほらよ。」
「あ…原田さん……ありがとうございます。」
そのままその洗濯物を縁側で原田さんと二人で畳み始める。
その間も原田さんは他愛もない話を面白可笑しく聞かせてくれて、私に気を遣ってくれているのが痛い程伝わった。
そんな原田さんに申し訳ないとは思ったけれど、それでも……どうしても聞きたい事を私は口にする。
「あの…斎藤さんと………
平助君はどうして此処に居ないのでしょうか?」
原田さんはじっと私の目を見つめた後、諦めたように溜め息を吐いた。
「……思い出したんだってな。」
「……はい。」
斎藤さんと平助君は伊東さんと一緒に御陵衛士として新選組を離隊した…と原田さんが教えてくれた。
「斎藤さんと平助君がどうしてるのかご存知ですか?」
「さあな……俺達新選組は、御陵衛士の連中との接触は
禁じられてるからなあ。
でもまあ、あいつらの事だ……元気でやってるだろうよ。」
その原田さんの言葉に私は少しだけほっとした。
「平助の事……恨んでるか?」
私は首を横に振る。
「そうか…ありがとな。
有希には本当に辛い思いをさせちまったな……すまねえ。」
また私は首を横に振った。
「総司の事……また好きになったんだろ?」
「………はい。」
「じゃあ…笑ってやってくれよ。
お前の笑顔が今の総司には一番の薬だ。」
そう言って原田さんは私の頭を優しく撫でてくれる。
私は黙ったまま、ただ頷くしか出来なかった。