第6章 影
一人残された僕は呆然と立ち尽くしていた。
「沖田さんに触れられるのが怖い」
有希ちゃんはそう言った。
疲れきった頭で、その意味を考えてみる。
あの時……全てを忘れてしまう前に有希ちゃんは、自分の事を何度も「汚い」と繰り返した。
「自分が汚いから沖田さんが汚れてしまう」と………。
だからなの…?
だから、僕が触れるのが怖いの?
……僕が汚れてしまうから?
「ははっ……
そんなの…僕にはもう……どうにも出来やしないじゃない。」
くつくつと一人で笑いながら、僕はそこで思考を停止させた。
翌日から有希ちゃんはあからさまに僕を避け、僕も有希ちゃんを構うのを止めた。
僕はまた有希ちゃんが壊れてしまうんじゃないかと心配だったけど、有希ちゃんは昨日までと変わらずくるくると働いている。
でも有希ちゃんは………笑わなくなった。