第3章 求愛
有希を退室させてから、俺と近藤さんは風間と天霧に礼を言う。
「俺達の猿芝居に付き合わせちまって…悪かったな。」
「ふん……なかなかに愉快だった。」
と風間は愉し気に笑う。
「こちらとしても彼女を妻取りたいと言うのは
以前からの念願なのですから、
こういう場を設けて貰えたのは有り難く思っております。」
天霧の方も相変わらずの丁寧な所作で俺達に頭を下げた。
「トシ……後はとにかく篠森君の答えを待つしか無いのだな…。」
「ああ…そういう事だ。」
風間と天霧は「また近い内に返事を聞きに来る」と言って屯所を後にした。
俺は正直、有希はその場で断るだろうと思っていたが、あいつは考えさせてくれ…と言いやがった。
これは案外、どっちに転ぶか分かんねえな。
何にせよ、俺も近藤さんも願っているのは有希の幸せだ。
あいつが自分で選んで進む道なら、俺達はただそれを見守ってやれれば……それでいい。