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薄桜鬼~最愛~

第4章 再生


「よお……お姫さん。」

土方さんの部屋を出てから、いつもの縁側に座り頭の整理をしていた私にその人は声を掛けてきた。

浅黒い肌をした異国的な雰囲気の彼を私が不思議そうに見つめると

「ああ……そっか。
 俺は不知火匡ってんだ。よろしくな。」

と悪戯っぽく微笑んだ。

「………不知火さん?」

「まあ…風間のダチみたいなもんだ。」

「風間さんの………」

「此処…座ってもいいか?」

私が頷くと、不知火さんは私から少し距離を開けて隣に腰を下ろした。

「風間に求婚されたんだろ?」

「………はい。」

「それで……断ったのか?」

「……いいえ。少し考えさせて下さいってお伝えしました。」

私の答えを聞いて不知火さんは心底驚いたように目を見開いた後、くくっと喉を鳴らして笑い出した。

「そりゃ風間も喜んだだろうなぁ。
 そん時のあいつの顔、見てみたかったぜ。」

一頻り笑った後、不知火さんは真面目な目をして私に語りかけた。

「あいつの申し出が自分にとって悪かねえ話だって事は
 分かってんだろ?」

「皆さん、そう仰います。天霧さんも…土方さんも…。
 だから自分でも良く分からなくなって…
 私が風間さんの元に行けば…皆が喜ぶのかなって……。」

「いや…そうじゃなくてよ……
 皆が喜ぶからじゃなくて、
 自分が一番嬉しく思える選択をするべきだと思うぜ…俺は。」

そう言ってくれた不知火さんを、私はじっと見つめる。

「なあ…お姫さん。
 俺は風間の援護をする気は更々ねえが……
 その上で言わせてもらうとよ…
 あいつんとこに嫁に行って、そんでぽろぽろ子供生んで…
 笑顔でその子供を育ててよ……
 そういう自分も一度想像してみな。」

不知火さんの言いたい事が何となくだけど、じんわり伝わってきた。

過去の記憶が無い私だけど、ここから先の事は自分で決められる。

自分がどうしたいのか、自分がどうなっていくのか……

考えて、想像して……自分で決めていいんだ。

私は少しすっきりした笑顔で

「不知火さん……ありがとうございます。」

とお礼を言った。

「いや…別に……礼を言われるような事は何もしてねえぜ。」

不知火さんは何だかばつが悪いような顔をして照れている。

そんな不知火さんを見て私がふふっと笑うと、不知火さんも自分の頭を掻きながら「ははは」と笑った。
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