第3章 出会い
セトside
バイトの後、買い出し帰りに人にぶつかってしまった。
その人は思い切り尻もちをついて、痛そうにさすっている。
「す、すいませんっす!大丈夫っすか?!」
「…大丈夫、です…」
慌てて両手に持っていたスーパーの袋を片手に持ち替え、手を差し伸べる。
その人は俺の手を握り、ゆっくりと立ち上がった。
その握る力が弱々しくて、心配になる。
「周りをよく見てなくて…すいませんっす。怪我はないっすか?どこか、痛いところは?」
フードで隠れた顔を覗き込むようにすると、その人は突然後ろに跳んだ。
驚いて固まっていると、震える声でその人は叫んだ。
「私に近付かないで!お願いだから…っ…!」
そこまで言うと、その人の身体が前のめりになった。
すんでの所でその人の身体を支え、軽く揺さぶる。
「大丈夫っすか!?しっかりするっす!!」
そう叫んだが、返答はない。
その人は動く気配がなく、ぐったりしている。
だけど、息はちゃんとあるようだ。
生きていることを確認して、ホッと息をつく。
とりあえず…アジトに連れて行くしかないっすよね…
その人を背に乗せ、荷物を再び手に持つ。
夜の道を、少し早足で帰った。