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【カゲプロ】罪の深層

第3章 出会い



香奈side

ーーぐ、ぐうぅうう〜……


「……すっごい音…」

自嘲気味に、私はフッと笑う。
最近何も食べてないなあ…お金もないし…。
どうにもならないや…。

しんと静まり返った夜の街。
その中でもより一層闇の深い裏路地に、身体を滑り込ませる。
動くことを拒否する私の身体は、鉛のように重たい。

だけど、私は休むことを許されない。

死ぬことさえ許されない。

私のこの《目》のせいで、堕ちていった人達の為
そして…
私の代わりにあの世界に置き去りにされた、兄の為に。
私は罪を償うんだ。


自分自身にそう言い聞かせ、重たい身体を引きずって歩き始める。
何処へ行こうなど決めていない。
ただ、飄々と彷徨うだけ。
さながら、亡霊のように。

大通りに出た。
顔を覆い隠すように、猫耳がちょこんと付いたクリーム色のパーカーを被り直す。
ちょうど視界が遮られたその時、誰かにぶつかってしまった。
エネルギーが足りない私は、地面に思い切り尻もちをつく。
鈍い痛みが、ジーンと広がる。


「いっつ……ご、ごめんなさい…」

「す、すいませんっす!大丈夫っすか!?」

「…大丈夫、です…」


声の感じからして、男の人だろう。
その人は慌てふためいて、手を差し伸べてくる。

…手を差し伸べられるなんて、いつぶりなんだろう。

そんな事を考えながら、その人の手を借りて起き上がった。


「周りをよく見てなくて…すいませんっす。怪我はないっすか?どこか、痛いところは?」


そう言って、その人は私の顔を覗き込もうとしてくる。
私はとっさに後ろに跳んで、その人と距離をとった。


「私に近付かないで!お願いだか、ら…っ…!」


グラリ、と視界が揺らぐ。気持ち悪い。
急に動いて、大声出したから…
ダメだ…もう……

誰かの声が聞こえた気がしたが、私の意識は、そこで途絶えた。





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