第7章 夏風邪にご用心
『じゃあ…私はもう行きますね。ちゃんとお粥食べてぐっすり寝てください。それじゃ』
カ「あ、うん………」
冷えピタの箱を片手に扉へと向かうカナ。
その手がドアノブにかかった時、僕は自分でもあり得ないだろ、と思う台詞を言ってしまった。
カ「カナ…あ、あのさ。もう少しだけ……ここに、居てくれない…?」
『………』
うわああああ!!
何言ってんだ僕は!!!
なんなんだ!!絶対引かれるよコレ!!
心の中で悶えていると、カナはドアノブから手を外した。
そして、表情を崩さず僕を見据える。
僕は慌てて弁明した。
カ「いっいや!その、ふ、深い意味はなくてさ…!!そ、そう!病人の戯言だと思って貰えれば……!!」
『良いですよ別に』
カ「………へ?」
予想だにしなかった返答に、思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまった。
カナはまた僕のベッドの横にある椅子に、なんでもないように座る。
唖然としていると、カナは訳が分からないといったように首をかしげた。
『なんですか?カノが居てくれってって言ったんですよね?何アホみたいな顔してるんですか』
カ「えっあ、いや…その…な、なんでもないよ」
…ほんと調子狂うなあ…。
さっきから振り回されてばっかりだ…。
苦笑いして僕は頭を押さえる。
カナに早く寝て休めと促され渋々ベッドに潜り込むと、すぐに睡魔が襲ってきた。
折角カナが持ってきてくれたお粥を食べれないのは残念だけど、この体調で睡魔に勝てる程僕は鍛えてない。
意識を手放す瞬間、優しい手に頭を撫でられた気がした。