第7章 夏風邪にご用心
コンコン
『入りますよ?』
カ「うん、どうぞ」
扉が開かれた。
カナは最初手ぶらだったけど、床に置いてあるお盆を持って入ってきた。
お盆には湯気が立ち上るお粥と、木製のスプーンが乗っている。
それらを机に置いてまた廊下に戻ったと思うと、今度は氷枕と冷えピタを持って入って来た。
カ「え、カナ…それ、一度に持ってきたの…?」
『そうですけど。何か?』
カ「えっ?あ、いや〜…なんでもないよ」
……どんな腕力してるんだろう。
というか、どういう持ち方してここまで持ってきたんだろ?
そんな素朴な疑問を抱える僕を余所に、カナはテキパキと作業を進めていく。
『…カノ、冷えピタ張りたいんで、髪避けといてくれません?』
カ「あ、うん」
片手で髪を押さえていると、カナは冷えピタを手に僕に近づいて来る。
………顔が。顔が、近い……。
カ「ね、ねぇカナ。ちょーっと近いかな〜…なんて……」
『しょうがないでしょう、遠いとやりにくいんですから。我慢してください』
さすがにイラついたのか睨まれた。
素で怖い…。
余計に上がっていく体温を悟られないよう、僕はカナから視線を外す。
やるべき仕事を終えたカナがまた離れた時に、少しだけ寂しく思ってしまったのは、多分熱で弱っているからだろう。
具合が悪い時は妙に人肌恋しくなる。