第7章 夏風邪にご用心
香奈side
……寝るの早いな。
スースーと寝息を立てて寝ている、先程まで意味のわからないことを口走っていたカノの猫っ毛を優しく撫でる。
病気というのは凄いものだ。
ここまで人を弱気にさせてしまうんだから。
『……いつも《能力》使ってるのかな』
ふと、そう思った。
《能力》を解いたカノは、時々私が感じる胡散臭さが全くなかった。
そうなってくると、普段から《能力》を使っている、ということになる。
…本音で話していないんだろうか。
他の団員とも。
……随分と損な性格だ。
あんなに仲間と呼べる人が居るのに…羨ましいくらいに。
『……ま、私が言えた事じゃないけどね』
自嘲気味にそう呟く。
ほんとの事を言ったら絶対に人は離れていく。
だから、嘘をついてまで、この暖かい場所を離れたくないと思ってる自分が居る。
でも、もしものことがあったら……
そんな気持ちが、毎日毎日、胸の奥底で競り合ってる。
自分は居ない方が良いって、消えた方が良いって。
それでも、もしも。
もしもこの場所に居ることが許されるのならーー
『……そんなこと、ある訳ないか…』
思い直してそう呟く。
私が居ると必ず不幸が訪れる。
またあの時みたいに……人の大切な物を全て奪ってしまう。
この団とも、近い内に離れなきゃいけない。
でも……
『もう少しだけ……ここに居ることを許して…』
誰も聞いていないと分かっていても、ポロッと口に出してしまった。
私はカノに毛布をかけ直し、お粥と梅干しにラップをかけて部屋を後にした。