第7章 夏風邪にご用心
『まったく…言ってくだされば、買い出しなんか行かせなかったのに…』
ブツブツと文句を言うカナ。
あぁ…なんだ。
気付いてくれてる人が居たじゃないか。
僕は自分の頰を叩いて《欺く》のをやめた。
気付いているのに欺いたって仕方がないからね。
それを気配で感じたのか、カナが僕の顔をじっと見てきた。
『…まさに病人って顔ですね。ひっどい顔』
カ「…ははっ。そんなにヒドいかな…?」
『ええ。病人は休んでてください。一回戻って必要な物持ってきますから。あ、お粥食べます?』
カ「うん、頂こうかな」
『じゃ、持ってきますね』
カナは立ち上がって部屋を出て行った。
ベッドの横にある誰も座っていない椅子が、なんだか虚しく感じた。