第3章 1.合宿しようよ!
細かいルールが説明された。どうやら最初にボールを持つ人はシュートは撃てない。色の認識が容易いからだ。そして色についての声掛けはタブー。それだけのシンプルな練習だった。だからこそ俺はナメていたのかもしれない。
「俺に勝てると思ってんのー?ちんじゃなくてお前が?」
強い。キセキの世代が相手だ、そう簡単に突破できるはずもない。他の選手だって全国レベルの人達ばかりだ。
『橋田君!一旦降旗君に戻して形成を立て直して!』
裕太「はっはい!」
「無駄だよ~。俺と同種の奴らかちんじゃなきゃ、俺は抜けない」
『クスッ…じゃああたしが相手になるよ、あっ君』
いつの間にか後ろに来ていたさんにかろうじてボールが渡せた。そこからの2人の動きはもはや別次元で、降旗さんも、紫原さんのチームの人達も動けなかった。そしてさんは勝った。
裕太「凄いッスよ、さん!これなら1番乗り出来そうッスね!」
『…今の発言はいただけないなぁ』
裕太「えっ」
『…よし、決めた。あたしはこれから自分からは動かない。橋田君か降旗君のどちらかが指示出してね。シュートも極力撃たないから』
裕太「ちょ、何でッスか!?それじゃあ…」
『何で?こんなふうにしたのは誰でもない、橋田君じゃない。甘えるのもいい加減にしなさい』
さんの目は、鳥肌が立つほどに冷たかった。降旗さんが元気づけてくれるけど、今はそれすらも入ってこない。憧れたさんに見放された。軽蔑された。
…そうか、佐野もこんな気分だったんだな。
それからはDFでもさんは積極的に参加してくれず、OFでもさんが動いてくれない穴は大きすぎて、相手チームにカットポイントをプレゼントしているようなものだった。そして俺達のポイントも伸びず、次々にクリア条件を見たしたチームが抜けていった。
さんに見放された悔しさ、クリアできない事への苛立ち、自分の不甲斐なさ。
裕太「…くそっ!」
『いい加減にしなさいって言ってるでしょう』
裕太「!さん!今のは、その…」
『少しは冷静になりなさい。見えるものも見えなくなるよ』