第3章 1.合宿しようよ!
さんは俺に自分で決めろと言っている。他の誰でもなく、自分自身の力で。
翔也「さんって不思議な人ッスよね。その目には一体何が見えてるんスか」
『…皆の見えてる世界と何一つ変わらないよ。それでも違うと言うのなら、見方が違うかな』
翔也「見方、ッスか」
『この世界をどう見るか、人をどう見るか、バスケをどう見るか。皆が皆違う見方をしてるからいろんな考えがあると思うし、何が正解とかは無いと思う。って、これもあたしの見方によっての意見だから、正解ってわけじゃないんだけどね』
それでもさんの言葉は、答えは俺の心に静かに入ってくる。俺はこの人と一緒に歩いてみたい。
翔也「それでも俺はさんの世界を見てみたいッス。もし連れて行ってと頼んだのなら、それは叶いますか?」
『…高梨君が本当にそれを望むのなら、あたしには拒否する権利はない。それは高梨君が自分自身で選んだ答えなんだから』
翔也「…そこで拒否でもしてくれたら、俺はこんなにも悩まないのに」
『悩むのが人間だよ。それに悩まない人生なんて、つまらないじゃない?』
昔見たような、そう、例えば悪戯を思いついた幼稚園児のような表情で笑うさん。
翔也「…素敵な人ッスね。やっぱり決めました。俺、さんの見てる世界を見たい。俺も一緒に連れてってください!…いや、俺が着いて行きます!追いてかれないように、必死に着いて行きます!」
『クスッ…高梨君も素敵な人だね。着いて行く、か。決して甘んずることのない、素敵な答え。だから、せっかくのその素敵な世界を潰すような事はしないでね』
翔也「はいっ!」
『…いいね、顔が生き生きしてきた。それじゃあ今日の反省会始めるよ』
さんは凄い。バスケでも人間性でも、俺の何段も上にいる。そういう人に俺はなりたい。だからさんという光の下で、俺も必死になって光ってやる。