第3章 1.合宿しようよ!
午後の練習が始まる。午前ずっと感じていた睨むような視線は感じられなくなった。佐野君は下を向いていた。
「午後のはじめはディフェンス練習だ。今回は特にステップに重点をおく。コーンを5mの幅に置いた。それぞれのコーンに触りながら進んでくれ。もちろんずっと中腰だな」
『これは初歩の練習ですが、下肢体幹筋の強化には一番うってつけのトレーニングです。変なフォームで行うと腰を痛めるか余計な部分に筋肉がついて重くなるだけなので、正しいフォームで行ってくださいね』
全員「はい!」
リコ「じゃあ呼ばれた人から並んでくださーい!まずは誠凛、日向君。次は…」
リコさんによって全員の名前が呼ばれていく。特に今回はメンバー編成を意識しているわけではなく、リコさんによる気まぐれだ。そんな中、あたしの組は佳苗、火神君となった。
「全員が誠凛になっちまったけど、と一緒か!腕が鳴るぜ!」
佳苗「が、頑張ります!」
『そうだね。大我君、その余裕がどこまで続くかな?』
「どういう事だ?」
「静かに!」
大我君の質問に被るように征ちゃんの声が響く。この練習の醍醐味、それは
『この練習はあたし達プレーヤーには終わりが分かりません』
大坪「どういう事だ?」
「この練習の終了時間はマネージャー達にしか分からない。もちろん僕達も知らない。彼女たちが気まぐれで決めた時間だ。30分で終わるかもしれない、3時間でも終わらないかもしれない」
『ペースを考えてほしいですがもちろん全力で取り組んでもらいます。この練習の攻略ヒントはここまでです』
リコ「とにかく倒れるまで頑張りなさい!それじゃあはじめ!」
リコさんの元気な声と、それに負けないくらい大きな笛の音が体育館に響き渡った。