第3章 1.合宿しようよ!
『バカだなんて思わないよ。藤井君はちゃんと原因を分かってる。それを忘れずに次に生かせばいいだけ。同じ失敗をしなければいいだけの話だよ』
康史「…さん…でも俺、せっかく繋げたシュートを俺が…」
福井「ばーか、嘆いてる暇あったら次失敗しないことだけ考えろ。ほら、行くぞ」
『クスッ…ね?その失敗を忘れずに、次に生かそうよ。ほら、行こ?』
さんが立ち上がった瞬間、体育館の蛍光灯と重なり凄く輝いて眩しく見えた。
青峰さんが霞んで見えてしまっていたため忘れていた。この圧倒的な光を。
目の前にさんの手が差し出される。その手をゆっくりと取り、俺は立ち上がった。
それからは福井さんもさんも俺も、ミスすることなく200回を到達した。走りすぎて何回も意識を失いかけたけどその度にさんから元気をもらった。これが3メンじゃなくただのダッシュなら確実に死んでいた。休憩を少し挟むため命拾いしたようなものだろう。
とにかく生きて昼食を獲得したのだ。
食堂へ移動すると、まだ少ししか人はいなかった。だからさんの元へ行く。
康史「隣、いいスか?」
『お疲れ様。大丈夫だよ』
康史「あざす。さんって噂通りッスね」
『どんな噂?』
康史「とにかく強くてかっこよくて、頭が切れて、そして優しい。俺も誠凛に行けば良かったッス」
『…ありがとう。そう思ってくれるのは嬉しいよ。けど、最後のは違うでしょ?』
康史「え?」
『藤井君は大ちゃんに憧れて桐皇に入ったんでしょ?ならそれを見失わない事。藤井君は桐皇で藤井君のバスケを見つけるべきだよ。それに』
康史「それに?」
『大ちゃんは藤井君が思ってる以上に凄い選手だよ。この合宿で嫌でも分かると思う』
康史「…そんなん、さんの凄さには敵わないッスよ」
俺がそう言うと、さんは悲しそうに笑った。違う、そんな表情をさせたかったわけじゃない。だけど俺は何も言えなかった。気まずくなった俺は、当たり障りのない会話をしてどうにかやり過ごしたのだった。