第3章 1.合宿しようよ!
拓斗side
すげぇ…すげぇよ、さんは。
佐野は認めないみたいだけど、あのキセキの世代と走力で渡り合ってる。いや、飛び抜けて勝ってる。
今80往復。赤司さんを除く他のキセキはもう息が上がってる。それなのに赤司さんとさんは汗を流しているだけだ。女なのに、すげぇ。
キセキの世代も、鈴城の姫様も、やっぱり名をあげただけのことはある。やっぱりこの人たちは天才なんだ。それなのに…
「ハァっ、ハァっ…」
俺は体育館の外で桐皇の桃井さんに介抱されている黒子先輩を見る。
拓斗「チッ…何が幻の6人目だよっ…」
康史「おー怖っ。その6人目に憧れて誠凛に入ったんじゃねーのかよ」
確かにそうだ。俺は中学時代に圧倒的な力の差があるキセキの世代を何度も助けたあの魔法のパスに憧れて誠凛に入った。
だけど蓋を開けてみれば…
いつまでも未練がましくさんを想う、ただの弱虫だった。何でもないふりを装い、さんのためだと言いながらただ逃げているだけの、ただの弱虫だった。
何をやらせてもパス以外は何も出来ない。だけどそれは俺も分かってたはずだった。
許せなかったのは、去年のWCの準決勝で黄瀬さん有する海常高校に勝った時のような強い目が、今では感じられない事。理由はきっと、赤司さんにさんを取られた敗北感だろう。
俺はあの眼が好きだった。決して諦めない、あの力強い眼が。
その眼が感じられなくなった今、何をやっても黒子先輩に苛立ちしか感じられなくなってしまった。
さんはあんなにも輝いているのに。
拓斗「…うるせーよ、藤井。お前だって同じなくせに」
この合宿は俺が黒子先輩を超えるチャンスだ。絶対に抜いてやる。そんで
さんに認めてもらう。