第7章 ◆花火祭り
見上げた空には
星を無視して
花火が次から次へと
夜空一面に広がっていた。
「 凄いっ。綺麗ですね!」
「あぁ、ここなら邪魔がないからな。
さなに見て欲しかったんだ。」
まるで、
生まれて初めて花火を見たかのような
そんなさなのリアクションに
夏目も思わず本音を零した。
そして
少しの間、静かに二人で花火を見ていると
さなが先に口を開いた。
「 ・・・あの、夏目先輩
笹田先輩と花火見なくても
良かったんですか?」
「・・・はい?・・・さ、笹田?」
ー…なんで、笹田?
いきなりの質問に
夏目は目を丸くさせながら
さなに向かって首を傾げる。
「 笹田先輩は、夏目先輩のことを
気に掛けているようだったので…その・・・」
ー…勘違いしているのか?
語尾を濁らせながら視線を外し、
少し悲しそうに話すさなを前に
夏目はふっと微笑み
さなの頭に手を置くと
手をポンポンっと跳ねさせる。
「 ?」
その行為に俯いていたさなが顔を上げると
夏目は微笑みながら言う。
「笹田は、
俺の妖力に気があるんだ。
・・・元々オカルト好きみたいだし。
俺は笹田に妖怪の事を話して
巻き込みたく無いんだ。
だから
笹田を避けながら生活しているせいで
さなには笹田が俺を追いかけているように
見えるかもしれないけれど、
決してそれは俺に対する恋心では無いよ。
…それに俺は
ここから見える花火を
さなだけに見せたかったんだ。 」
夏目がさなに向けてそう諭すと
さなは頬を赤く染めながら
にっこりと笑う。
「 そうだったんですね。
私、勘違いしちゃって・・・ごめんなさい。」
「何も謝ることはないだろ?
ほら、もう終盤だ。」
少し俯きがちに謝るさなに
夏目が花火へと視線を誘導すると
眩しいほどに花火が上がっていた。
「 ありがとうございます。
…夏目先輩。」
ー・・・でも、少なからず
笹田先輩も・・・夏目先輩のことを・・・。