第18章 ◆柴田ノ恋
狭い結界部分から這い出て
更に奥へと進む二人。
「目が慣れたとは言え、暗いな」
「あぁ。」
もう入口の光は届かない所まで来ていて、
それでも出口の光は見え無い。
ーきっとこの何処かに·····。
夏目は重い気配に集中させながら
この洞窟のどこかに居る妖に向かって
足を進めていた。
その夏目の少し後ろを着いていく形で
柴田が後ろを警戒している。
懐中電灯でも持ってくりゃ良かった。
なんてブツブツと呟く柴田は
恐怖心からか黙る事が無い。
そんな柴田の言葉は
右から左へ流す夏目だったが
ーーカツーーン
真っ暗な洞窟内で何かが響く音。
思わず二人の足が止まる。
「へっ」
夏目の背後に居る柴田は
夏目の服を掴んだ。
「な、夏目?
居るよな?なんか、なんか居るよな?」
「·····」
さっきの音がぼんやりと反響する中
夏目は柴田の言葉を無視して
音の根源へと耳を傾けた。
·····が、
「お、おい·····、こういう時は返事しろよ。
お前まで何かあったのかと心配になるだろ。」
震える手で夏目の服を揺さぶる柴田。
「あぁ、悪い柴田。
さっきの音に少し集中してしまっていた。
·····あっちの方から聞こえた気がするんだ。
行こう。」
柴田の言葉にハッと我に返った夏目が
真後ろに着いている柴田へ返事を返した後
またゆっくりと足を進めた。
ー·····きっとこの先だ。
柴田が服を引っ張るせいで
少し負荷が掛かっている状態で
夏目は音の元へ進む。
その時、
ーーカツーーン、カツーーーン
またも耳に響く先程の音。
「なっ、何なんだ?一体。
さっきより音がデカくなってないか?」
夏目の服を掴んでその場に止まろうとする
柴田の言葉を無視して
夏目は足を止めることなく進んだ。
「夏目·····?」
そんな夏目に声を掛けるも
真剣な夏目の態度に
それ以上、柴田は口を出さなかった。