第7章 ◆花火祭り
「 あの…、夏目先輩?
どこへ行くんですか?」
「さっき歩き回ってたら
気になるところを見つけたんだ。」
さなの手を引きながら、
浴衣のさなに歩幅を合わせ
ゆっくりと森の中を進む夏目が
時折、後ろのさなに振り向き
無理させていないかを確認する。
そして、10分ほど進んだところで
大きな岩が目立つ広場に出た。
「 ・・・ここは?」
「よっ・・・と、
ふう。
さな・・・ほら、おいで。」
夏目はパッとさなの手を離すと
目の前の大きな岩の裏に回り
隣接する岩を使って上まで登ると
岩の上から上体を出し、
さなに向かって手を伸ばす。
「 え、・・・の、登るんですか?」
「あぁ、大丈夫だよ。
ほら、掴まって。」
岩の下に構えるさなは
少し困惑しながらも
最終的には夏目の微笑みに負け
体を託すように手を差し出すと
夏目はその手をしっかりと掴み
段差になっている近隣の岩まで誘導し
最後の岩に乗るのを確認すると
「さな、痛かったらごめん。」
そう、前置きをして
さなの腰に手を回し
そのまま岩の上まで引き上げた。
「 わっ!」
いきなりの浮遊感にバランスが崩れ
さながフラつくと
夏目がしっかりと腰を固定し
反対の手で肩を掴んで体制を整える。
「ごめん、大丈夫だったか?」
ふわりと、抱きしめられる形で
岩の上に座らされているのを認識すると
さなは目の前の夏目の問いに
ただ、こくりと頷いた。
「ここが一番、綺麗だと思ったんだ。」
夏目がさなの隣に座り直り
空を見上げて発する言葉に
さなも釣られて空を見上げると、
「 あ、花火ー…!」