第7章 ◆花火祭り

「 ･･･まずい･･･！」


ニャンコ先生の言葉に

思わずその場を駆け出す夏目。


「 あ、おい！夏目！

この娘はどうする気だー！！」



石段に崩れる笹田を見て

駆け出して行った夏目に大声を上げるも

その声は夏目に全く届かなかった。


「 全く世話の焼ける･･･。

私は使用人では無いぞ、夏目。」


そんなニャンコ先生のボヤキは

夏目に届く筈もなく、

暗闇にかき消された。














「さなーっ！西村ー！

何処だ？！」



ー…お願いだ、間に合ってくれ…！





ニャンコ先生の話を聞き、

女の人の霊がニャンコ先生じゃない事を

知った夏目はすぐ様その場を走り去り


制止の声をかけるニャンコ先生を無視し

あてずっぽでも走りながら

さなと西村を呼び掛けた。



ー…もし、本当の妖なら二人が危ない。

何処に居るんだ？



「 さなー！西村ー！」


夏目が何度も声を張ろうと

2人からの返事は無い。


「 ハァハァ･･･」


ー･･･あの二人も

同じ、花火を見ているなら、、、



夏目は立ち止まり、煽る心臓を抑え

一定のリズムで鳴り響く花火の音を聞くと

夜空を見上げる。





ー…あ、、、！



「ここからじゃ、

花火は見えない…！」




夏目は途端に走り出すと


夜空を見ながら

花火が見える位置まで

必死に走った。





「さなっ！西村！」




ぜェぜェと吐く息遣いが鬱陶しい。

運動部に入ればよかったと今更ながら後悔し

時折、足を止めてはまた走り出し

必死に二人を探した。


「 ･･･。」


ー…さなは初めて祭りで

皆で祭りを楽しみたいと言っていた。

…今まで我慢してきたんだ。

今日くらい、

妖からは離れて息抜きしたっていい。


…今日くらいは…！




夏目が握り拳を作り

また駆け出そうとした時だった。



ーガサガサッ！



「 ･･･っ？！」


小さく葉を掻き分ける音。

それが夏目の耳に届き

すぐ様、音のする方へ振り向く。


そして、

小さく揺れる影が現れ身構える。

















「 …夏目先輩？」


しかし、

その声は聞き慣れたものだった。