第7章 ◆花火祭り
「・・・なんだよ肝試しって
妖にも怖がるモノがあるのか?」
ニャンコ先生のドヤ顔に
ため息をつきながら
夏目はその場に立ち上がり
笹田の元へ移動する。
「人間はみな、
お前のように見える訳では無いからな、
見えない、と云うのは怖いものなのさ。
それとは反対に
妖にとって、見えていない筈の人間に
見られると云うのも、また怖いモノなのさ。」
所々、花火の音にかき消されながらも
その言葉は夏目の中の何かを響かせる。
「それで、
人間に見られたら負け、と云う事か?」
なるほどね、
そう感心しながら夏目は話の先へと誘導し
笹田の上体を起こした。
「いんや、
もし、見られたら喰う。」
「ぶはっ!
な、何だって?!」
ニャンコ先生の爆弾発言に吹き出すと、
夏目は笹田を運ぼうとする手を止めた。
「・・・というのは嘘で、
もし人間に見つかったら
怖がらせて二度と近付けないようにするのさ。
何せ!此処は酒が湧き出ると言われる
神聖な樹海なのだ!
…人間にひょこひょこ立ち入られては
気が散って酒が不味くなる。
それに、そんな事に興味がある奴は
大抵ちょっと勘のいい奴を連れているしな。」
「 ・・・。」
ー…ニャンコ先生の最もらしいゲームだな。
最早、
人間である夏目の用心棒とは思えない発言を
繰り返すニャンコ先生に夏目もタジタジである。
嫌な溜息ばかりが出る夏目も
思考を入れ替え、
ふと思い出した事を
目の前のニャンコ先生に軽く聞いてみた。
「そういえば、笹田がここには
女の人の霊が出るって言ってたんだが
それも、ニャンコ先生の仕業か?」
ー…どうせ、また
レイコさんの姿にでも化けて…
「誰がそんなめんどくさい事するか。」
ー…え?
「私のような高貴な妖にしてみれば
人間なんてもの、
ガオーの一声で怖気づくわ!」
そう言ってニャンコ先生は
両手を挙げてポーズをとる。
軽く聞いた質問は
夏目にとって殆ど答えが出ていたようなもの。
それが覆され、夏目は言葉が出ない。
「ニャンコ先生、じゃない、のか…?」
ー・・・それじゃぁ、誰が・・・?