第7章 ◆花火祭り
「へー…。」
「ねぇ夏目くん!ちゃんと聞いてる?
・・・それでね、女の人の霊が
浴衣の女の子と一緒に居る男の人を見つけては
私の可愛い子って言いながら連れ去って…」
打ち上がる花火を背に
笹田は間髪入れることなく怪談話を続けている。
ー…いつまで続くんだろうか。
夏目は笹田の話は耳に入らず、
花火にも集中できず
さなを心配しながら
上の空でただ花火を見ていた。
ー西村はさなの事を好きだと
笹田は言っていたが・・・どうなっているんだろうか。
2人でいい想い出になればいいが。
…なんだろう、心配とは別の感情が
邪魔してくる…。
「…と、云う訳!
夏目くん!確かめに行くわよ!」
「 うぉっ?!」
いつの間にか話し終えていた笹田が
階段の最上段へ腰掛け膝の上に頬杖をつく
夏目の腕を引っ張り
バランスを崩しかけている夏目に見向きもせず
そのまま神社へ連れて行った。
「なっ?!ちょっ、
笹田!花火はっ?!」
「そんなの後よー!」
夏目は腕を引かれながら
その場を立ち去る笹田に問い掛けるが
笹田は構う事無く神社へ進んでいく。
ー…結局、こうなるのか…。
夏目は笹田を説得するのを諦め
されるがままに笹田に引っ張られていると
何かが目の前にいることに気付く。
「…?」
暗闇の中、何かが徐々に近付くのを
目を凝らしながら見ていると
「ふぎゃっ?!」
「なっ?!」
勢い良く飛んでくるそれが
運悪く、笹田に命中する。
「笹田っ?!大丈夫か?」
夏目が、
地面に倒れ込む笹田に駆け寄り
意識を手放している笹田をそっと寝かせておくと
回りを確認し、
「 にゃ〜お」
「やっぱりか・・・ 」
よろよろと歩くその飛んできた生物を掴み上げ
ため息をついた。
「 にゃにゃ〜ん」
白々しく、下手糞な猫の鳴き真似で
ムスッと笑う分かりやすい猫なる者・・・
「 ・・・ニャンコ先生・・・。」