第1章 ◆少女の名
「夏目ー!遅いぞ!」
本来の目的を忘れ、ただ
ぼーっと立ち尽くしたままの俺に
西村がすぐ先で
手招きをしている。
「早く来い!パン無くなっちゃうぞ!」
「あ、あぁ、今行く。」
「まったく、夏目はマイペースすぎるんだよ。」
男ならシャキッとしろよ。
そう付け足しながら俺への説教をはじめると
いつの間にか買っていてくれた俺のパンを
ほら、と軽く投げた。
落とすまいと、慌てて受け取ると
「どーせ間に合わないと思ったから
お前の分買っといたんだ。
代償は高いぞ?」
クックックと笑いながら
焼きそばパンを頬張り歩いていく西村に
俺は遅れを取らずついていく。
「西村、ありがとう。」
「なんだよ、改まって。
いつものことだろ?」
そう言いながら手をヒラつかせると
教室への道を辿っていった。