第1章 ◆少女の名
放課後。
「夏目ー、腹減ったー!
帰りに七辻屋で腹ごしらえしてこーぜ!」
西村が鞄を肩に乗せ
お腹をさするジェスチャーをしながら
いつものセリフを零す。
「悪い、西村。
今日は寄る所があるんだ。
また明日にしてくれないか?」
さっき
望月 と呼ばれていた子の
〝学校終わったら返してあげるから。〟
その言葉が気に掛かり、
行かずには居られなかった。
その為、いつもの西村の誘いを断ると
「また藤原さんのお使いか?
仕方ないか。」
さも、慣れているような口ぶりで
明日忘れんなよー!
と付け足し、そそくさと教室を出て行った。
俺は西村が帰るその姿を見届けると
足早に学校を後にし、森へと向かった。
「ニャンコ先生いるか?」
午前の授業が始まる前、
パトロールをしてくると言い出て行ったきり
帰ってこないニャンコ先生を
小声で呼びかける。
「おい、七辻屋には行かんのか。」
「なっ!!!」
どこからともなく現れたニャンコ先生は
俺の頭にぼすっと落っこちてきた。
その衝撃に耐え切れず
その場に崩れてしまった俺を見ながら
軟弱な奴め。
と文句を言い
トテトテと歩き出すニャンコ先生の後を追う。
「先生、今まで何してたんだ。」
先程の衝撃で軽く痛めた首をさすりながら
ニャンコ先生に問い質す。
「学校内を浮遊していた妖に
聞き回っていたのだ。
それらしい人物の確証は得たが、
私はそやつの姿を見ておらん。
夏目、お前は見たのだろう?
望月さな という少女を。」