第1章 ◆少女の名
「望月ー!」
その時、
確か1つ下の学年を担当する先生の声が
俺達の居る反対側の渡り廊下から
響き渡った。
「 は、はいっ。すぐ行きます。」
その少女はまるで
親に呼ばれた子のように
担任の先生と思われる
先生の元へと掛けていった。
俺を横切る際、
小さく
失礼します。
と健気にも頭を下げて。
……望月?
きっと、あの子の苗字だろう。
その名はどこか聞き覚えのあるような
でも定かではなくて
思い出し方も分からない程、不鮮明だ。
しかし、今確実に言えることは…
……あの子、妖を見ていた。
それに、学校終わったら返すって……
まさかあの子が友人帳を持つ者…?
よく、俺の頭に流れ込む
妖の記憶に映るレイコさんを見ているが
レイコさんとは似ても似つかない程
純粋そうであったその子に
友人帳の名を返すという過酷な事が
俺には連想出来ず、
ただ、その子が去って行く姿を
ぼんやりと眺めていた。