第7章 ◆花火祭り
「笹田………………。」
「おっさなちゃん!…と夏目。
ぃんやー、さなちゃんの浴衣姿は
可愛いなあ!なあ?夏目!」
「 〝は〟ってどういう事よ!」
会場に着くなり
夏目とさなを出迎えたのは西村と
夏目たちと同じクラスの笹田だった。
さなを贔屓する西村に
しっかり突っ込む所も気が引けない。
ー…なぜ、笹田…。
もう既に嫌な予感しかしない・・・。
びっちりと帯を巻き
姿勢よく立つ姿は遠くから誰が見ても
笹田と分かるほどだった。
そして、
さなの浴衣姿に大絶賛の西村の隣で
笹田はひたすら
裏のある笑顔を夏目に向けている。
ー…やっぱり、
嫌な予感しかしないっ!
そのまま笹田は
夏目の隣にいるさなに
目を向けるなり怪しい笑顔のまま近づくと
「あなたが夏目くんの妹って噂の
望月さんね?
私は笹田です。よろしくねっ!」
そう片手を差し出す。
勢い良く差し出された手に
一瞬さなは戸惑うものの
「 …宜しくお願いします。」
ニッコリと笑顔を返して握手をする。
そのとき、笹田がキラリと眼差しを光らせ
握手をしたままさなの手を引っ張る。
「 わっ?!」
そのままさなを人気の無い
屋台の裏へと連れていくと
ぱっと手を離し
さなの耳元へ顔を近付けた。
「でー?
あなたは夏目くんの親戚なのよね?
だったらあなたもこの世のものでないものが
見えたりするのかしら?
夏目くんったら、
何も話してくれないの。
良かったら私に教えてくれない?
お姉さんとして
相談してくれてもいいわよ!」
ー…オカルト好きなのかな?
それにしても、お姉さんって…
「いや、あのー…
そういう事は…」
「 ねぇ、どうなのよ?
見えるんでしょ?妖怪とか。」
早口に話した後、間髪入れず
さなを質問で攻める笹田に
さなは暫し戸惑い
少しずつ後ずさり
夏目の元へ戻ろうとするが・・・
ー・・・トンっ。
後ろを見ていないせいか
誰かにぶつかってしまった。
「 あっ、ごめんなさ…」