第6章 ◆名取の札 (弐)
「夏目、二手に別れよう。
私は今さっきの広間で封印の準備をする。
30秒経ったら来てくれるかい?」
なんとはなしに構図を理解した名取は
後ろでぜェぜェと走る夏目に策を提案する。
「…分かりました。」
夏目の返事を然と聞くと名取はその場に止まり、
夏目は反対の方向へと向かい手を挙げ
「おい!こっちだ!」
そう、妖を誘き寄せる。
…が、しかし
「名取!名取、喰ウ!」
妖は夏目の言葉をスルーし、
名取の方へと飛び掛った。
「っ…!?
名取さんっ!!」
…ーチッ。
名取は心の中だけで舌打ちをすると
早々にジャケットから札を出し
飛び込んでくる妖をギリギリの所で避けると
妖の背後に回り、背中に札を突き刺した。
「ヌウワァアー!!!」
突き刺された札から光が放たれ
妖はその場で跡形もなく消えた。
「名取…さん…。」
「夏目、ごめんよ。
私の読みが外れたみたいだ。
封印では、
間に合わなかった。」
名取は冷や汗とも取れる汗を軽く拭うと
夏目に申し訳なさそうに謝った。
「仕方ないですよ…。」
夏目と出会い
手荒な事はなるべく避けてきた名取が
少し悲しそうな表情をする。
「それより、
さなが心配です。
…戻りましょう。」
「そうだね。」
重い空気が漂う中、
夏目が切り出すと
二人は直ぐ様外へ繋がる廊下を戻ろうとした
その時、
〝やっと、来たか。
…名取。〟