第6章 ◆名取の札 (弐)
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「 ん…」
さなは長い夢を見た後のような
感覚に陥りながら重い瞼を薄らと開ける。
…ー今のは…李雲様の記憶…。
目の前に広がる木々と
合間から降り注ぐ木漏れ日
ふわり、と吹く風が
悪夢を見たように火照った体を
優しく冷やしてくれた。
そして、
鮮明に覚えている李雲様の記憶を辿りながら
ボヤけた視界がクリアになると
はっと我に返り
寝ていた体を起こし、辺りを見渡す。
「 あれ、私・・・。
それより、誰も居ない…?
夏目先輩は?」
神社の前に寝かされていたさなは
大きな陣の中に居ることを確認し立ち上がると
気を失うまで傍に居たはずの夏目を探す。
ー…何処行っちゃったんだろう。
きっと夏目先輩も
名取さんと知り合いだということは
李雲様にはすぐバレてしまう。
嫌な予感が全身を使って痛感すると
「 行かないと…。」
さなはすぐに神社の中へと駆け出した。
その時
「待って…!」
…ーえ?
頭の中に直接響く声は
李雲様の時と同じくして
さなを呼び止める。
「…助けて。」
その声にさなは立ち止まり辺りを見回すが
声の主は見当たらず、
陽が傾き、薄暗い森が更に薄暗くなっている中
木々が不気味にも撓っている。
「 …誰?」
恐る恐る問い掛けると
素早く、脳内に答えが帰ってきた。
「…ーー。」
…ー!!?