第6章 ◆名取の札 (弐)
僕は、気を集中させる。
禍々しい何かが僕を目掛けてくる。
頭の中でその始点を辿ると
一人の人間が札を片手に
何かを呟いているのが見えた。
〝お前かっ…!〟
僕は、強大な熱と光を放出しながら
凄まじい速さで飛んでくる火の玉を
辛うじて避けると、
ギリギリ届かなかった木の上に立つ。
そして、捉えた人物目掛けて
僕は一気に距離を縮めた。
「っ…やったか…?!
これで、
おれは認めてもらえる…
名取の名に恥じぬように!」
ゼェゼェと息を切らしながら
勝利を確信している人間は
少しだけ口角を上げている。
そして、僕はそいつの背後に立つと
一言だけ投げ掛けた。
〝残念。〟
そう言うが早いか、
僕は目の前の人間、 祓 い 屋 を切り捨てた。
〝こんなに非力な人間が
何を頑張っているんだか。〟
名取と名乗る祓い屋が消え去った所には
名取が持っていただろう札が
ごっそりと残されていた。
…こんなもので、凪雲を…。
キリっと唇を噛むと
僕はそれを手に取り
一つ残らず燃やし握り潰した。
〝名取…か。〟
…腕試しにしては質が悪過ぎる。
そうして、
僕は
凪雲を祓った復讐を名取にする為
神社を、山を、村を
全てを廃棄したんだ。