第6章 ◆名取の札 (弐)
熱が上った頭を煮やしながら
僕はずんずんと麓まで進む。
どれだけ経っただろうか。
ふと、周囲に気を向けると
辺りは動物や虫、
それに森に住んでいる妖たちも
ざわついていた。
きっと、先程の騒ぎが噂になっているのだろう。
…守れなくてごめんな。
心の中でそう念じると
僕はあたたかい感情を空にして
ただただ、村へと突き進んでいた。
その時ー
「…ーくも!…李雲!逃げて!」
遠いところから一気に近付く
聞きなれた声。
それは、ほとんど叫び声と化していた。
〝凪雲っ?!
どうしっ…!!〟
僕は凪雲の声を追い、振り返ると
近距離に迫ってきていた凪雲が
僕に飛び込んでくる。
凪雲を受け止めようとするも、
体制が間に合わず、
僕はあっさり、凪雲に突き飛ばされてしまった。
〝ぅぐっ…てて。〟
ボスンと草が潰れる音をたて
草むらに飛ばされた僕はぶつけた頭を押えながら
上体を起こした。
そして、僕を飛ばした本人
凪雲を視野に捉えると
抗議の声を上げようと口を開いたその時
泣きながら笑って僕を見る凪雲は
真っ赤な光に包まれた。