第6章 ◆名取の札 (弐)
そんなこともつゆしらず
僕は欠伸を噛み殺しながら
凪雲に引っ張られ
戻ったら昼寝の続きか、なんて
呑気に考えていた。
ー・・・にしても、雷なのに
どうして山を下っているんだ?
雷なら、空を見渡せる
山頂の木の上が凪雲の鉄板だ。
凪雲に腕を引っ張られながら
僕がぼーっとそんな事を考えていると
「ねぇ、
李雲は山を守ってるんでしょ?」
急に足を止め、
俯き加減に凪雲が僕に問う。
〝えぇっ?〟
いきなり、進みをストップさせるもんだから
引っ張られていた反動で
凪雲にぶつかりそうになる僕は
ギリギリの所で足を止めた。
〝今更、何を言うの?〟
…本当に今更だ。
何を言い出すのかと思った。
そして、凪雲が動かない所を見ると
恐らく目的地に辿り着いたのだろう。
〝・・・?〟
僕は視野に映っている
凪雲の前に広がる森林風景が
いつもと違う事に気付き、
さっきまで僕の前で
僕の腕を引っ張っていた凪雲を追い越し
状況を把握すべく、
凪雲の前に出て目の前の光景を
然と捉えた。
〝な、なんだよ、これ…。
どうなっているんだ?!〟