第6章 ◆名取の札 (弐)
さなの頼みに夏目は驚くが
「あぁ、勿論
俺もそのつもりだ。」
夏目は同意を裏付けるよう
ニコリと微笑みさなに答えた。
すると、
「全く、世話の焼ける奴らだ。
大人しく帰ればいいものを。」
夏目の頭上より
ふわりと飛び降りてきたニャンコ先生が
文句を散らしている。
「 ニャンコ先生!
さっき李雲様との間に割って助けてくれたのは、
ニャンコ先生ですよね?
…ありがとうございます。」
さなの言葉に
ニャンコ先生はふんと鼻を鳴らし
何かを考えたように顔を顰めると
意地悪い顔を作り、夏目に視線を向ける。
「夏目、七辻屋の饅頭6つだぞ。
さなもだ!
それで手を打ってやろう。」
ニャンコ先生は目玉を饅頭にさせ、
ヨダレを垂らしながら
尻尾を振り晒す。
「 …よ、喜んで。」
一瞬、驚きの表情を見せたものの
笑顔で返事をするさなに
夏目は溜め息を漏らしながら
「12個は食べ過ぎだぞ、先生。」
そう呆れながらも注意をし、
さなに肯定した。
「そうと決まれば、早速行きたいところだが
情報が少なすぎる。
ニャンコ先生、何か知らないか?」
夏目は腰に当てていた手を
胸の前で組み直し
饅頭に釣られご機嫌に踊っている
ニャンコ先生を見やる。
「此処は、二人の神様が守り抜く
邪気を放つ虫さえも入る事の出来ん
神聖な神社と聞くが、それ以上は知らんな。
…しかし、
その神社が人知れずここまで崩壊したのも
何か原因があるのだろう。
そもそもの元凶である名取の小僧は
何処へ行ったのだ?」
災ばかり招きおって、と文句を付け足し
ニャンコ先生は怒りの形相で辺りを見回した。
「 此処で話していても埒があかないな。
名取さんを探すか。」
夏目の言葉を合図にさなも立ち上がり
無言で頷くと3人はその場を後にした。