第6章 ◆名取の札 (弐)
「 ・・・?」
ー・・・この光っ。
意識を手放す寸前で
無理矢理に目をこじ開けるさなは
李雲様の指の合間から注ぐ見慣れた光に
徐々に意識を戻して行く。
〝なんだっ!?〟
思わず李雲様の手がさなから離れる。
その瞬間、その場に膝から崩れるさなは
顔だけを上げて目の前の光景に唖然とする。
さなの視界が開けたそこには
大きくて真っ白な戌のような妖が
さなを庇う様にして李雲様との間に
立っていた。
〝こ、こんな妖を従えていたのか?〟
予想外の事に李雲様は怯み
少し後退りながら体勢を整えていた。
「さな、こっちだ。」
さなが目の前の事に目を奪われていると
不意に後ろから聞き慣れた声が聞こえ
それと同時に肩を掴まれ反射的に振り返る。
「 ッ夏目先輩…?!」
そこには見慣れた顔が目の前にあった。
さなは驚く反面、嬉しく
安堵の溜め息を漏らすのも束の間、
「説明は後だ。一旦引こう。」
「 ・・・はい!」
夏目はそう言うと
床に手を付き崩れていたさなを
半ば抱えるようにして
李雲様とは反対に面する少し開いた襖を出た。
〝あ、待て!〟
後ろから李雲様の制止の声が聞こえるも
一切振り返ること無く、夏目が導く方へと
さなも無理矢理足を働かせる。
「 さな、俺につかまって!」
「 ・・・は、はいッ!」
そして二人は縁側から外に飛び降り、
直ぐ側にあった山道へ入る石段を
素早く掛け降りた。