第6章 ◆名取の札 (弐)
その途端、
李雲様はゆっくりとさなに近付く。
「 ま、待ってください。
話を…、少しでいいので、
話を聞かせてください。」
さなは近付く李雲様と同じくして
ジリジリと後ろに下がるが、
……ートンッ
背中には冷たい壁が当たり
さなはそれ以上の逃げ場を無くした。
〝君は何も知らないみたいだから
一つだけ、教えてあげるよ。
毒気を含んだ妖気を放っていたのは僕。
誰も近づけないようにしていた。
なのに君は人間特有の正義とやらを振り翳し、
名取に騙され、僕を騙したんだ。〟
「 私が…
名取さんに、騙された…?」
さなが李雲様の言葉に呆気に取られ
その場から動けずに居ると
李雲様は目の前で立ち止まった。
そして、手を伸ばし
掌をさなの顔に翳すと、
〝凪雲を祓った罰だ。〟
そう言って掌をさなの顔に当てる。
さなの顔全体を覆う形で
視界を塞がれると
さなは金縛りのように
身動きが取れなくなる。
「 ぅッ・・・!」
言葉を発する事も儘ならない状況で
ひやりと冷たい李雲様の手が
体内に入ってくる慣れない感覚に陥ると
さなは思わず目を瞑った。
「 り、李雲・・・さ、ま・・・!」
さな自身の意識が遠くなり、
体全体の力が抜けて
ゆっくりと、
その場に崩れ落ちそうになった
その瞬間、
「・・・娘を離せ!」
眩い光がその場を包んだ。