第6章 ◆名取の札 (弐)
「まずは、
巫女らしく掃除から、かな?」
一夜が明け、さなは
用意された衣装に着替えると
名取と共に御厨神社へと舞い戻った。
さなの姿を見て
名取は少し愉しそうに提案する。
ー・・・この格好は流石に、
夏目には頼めないな・・・。
そんな事を思い苦笑いを浮かべる名取は
さなの目の前に箒を差し出した。
「 はぁ。」
楽しそうな名取とは反対に
さなは力なく返事をすると
渡された箒を手に神社の鳥居を潜る。
そして、
目の前の階段をゆっくり進み
少し汗ばむ程度に登り切ると
其処には、
荒れ果てた無人の神社が聳え立っていた。
「 わぁ・・・!」
思わず声を零すさなは
その神社を上から下まで見渡した。
……ー立派な神社だったんだろうな。
李雲様が居なくなり20年。
その間に劣化したであろう御厨神社の外観は
壁が剥がれ、屋根の瓦も所々落ちていて
人が踏み込んだ跡は何一つ残っていないほど
雑草が生い茂っていたが、
その風貌から
過去に偉大な神様が祀られていた事は
すぐに想像できるほど圧倒的だった。
「 さてと…、
学校も無断欠席になっちゃう前に
早くに終わらせちゃおう。」
さながそう意気込むと
手に持った箒で石段の上に
無数に散らばった落ち葉を掃き始めた。
「 ・・・にしても、」
ー・・・名取さんは
夏目先輩にさせる気だったって言ってたけど、
「 流石に、この格好は・・・」
ー・・・私も見たくないかも・・・。
夏目の巫女姿をふと想像した上で
そんな事を思いながら
掃除に勤しむさなだった。