第1章 ◆少女の名
「おっはよー!」
バシン と肩を叩きながら
陽気に挨拶をしてくるのは
同じクラスの西村。
俺が転向してきて初めて出来た友達でもある。
クラスではムードメーカーな存在だが
結構生真面目で、俺の体調や顔色を
常に心配してくれる良き友である。
そんな西村がいつものように挨拶を兼ねての
最新、校内女子情報を話すかと思いきや、
「なあ、夏目。
お前ってさ1つ年下の親戚いんの?」
と、突拍子もなく
訳のわからないことを俺に投げかける。
「なんの話だ?
俺の親戚はここには藤原夫妻だけだぞ?」
俺の言葉に安堵した表情を浮かべる西村は
良かったあ!と天を仰ぎながら口早に話し出した。
「いやー、実はおとつい
俺たちの後輩にあたる1つ下の学年に
美少女が転校してきたんだよ!
夏目に会わせたら、きっと
夏目に一目惚れしちまうだろ?
だから内緒にしてたんだけど、
昨日、俺のスパイ達から情報を買ったところ
どうもその子の家庭も複雑らしくて
親が離婚してるらしんだけど、
旧姓は〝夏目〟なんだって。
だから、もしかして、同じ境遇でもある
夏目の親戚なのかなーって思ったんだけど。
違うなら保護者の同意は要らないな!
存分に彼氏候補になれるって訳だ!」
アッハッハ!
と笑いながら浮き足立った西村に
色々と突っ込みたくなるのを抑え
俺は最低限の質問を西村に投げかけた。
「その子は、髪が長いのか?」
半歩先を進む西村が足を止めると
俺に振り返り驚きの眼差しで俺を見やる。
「……まさか……夏目……」