第5章 ◆名取の札
……ーはぁ。
さなと居るところを
面倒な人に会ってしまった上に
さなの事を既に知られている。
更に、さなに祓い屋の手伝いまで
させようとしている。
……ーもう、会いたくない。
いや、さなに会わせたくない。
夏目はそんな事を心の中で呟きながら
ため息ばかりを零していた。
その時
「 あのー…夏目先輩?
どこへ向かってるんでしょうか。」
夏目が名取から逃れる為に
無意識に引いたさなの手を離さず
ただひたすら歩いている現状に
さなが恐る恐る尋ねる。
「あぁ、ごめん。
無理に引っ張ってしまってすまない。
もう、ここまで来れば大丈夫だろう。」
はっと我に返る夏目は
ずっと握ってしまっていたさなの手を離し
辺りを見渡すと胸を撫で下ろした。
夏目のその姿を見て
「 先輩は、名取さんのお手伝い
したことあるんですね。」
さながそう解釈すると
夏目は強ばっていた表情を緩め
「何度もあるよ。
どれも、とんでもない手伝いだったから
さなに手伝わせる訳にはいかない。」
……ーこれ以上、彼女を傷付ける訳には…。
まるで、壊れたものを扱う様な
そんな眼差しで夏目はさなを見やった。
「 先輩…? 」
さなには祓い屋の仕事というのが
全く想像もつかず、
ただ、夏目の言うとおりに頷くだけだった。
そして、既に薄暗くなっている空を見上げ
「七辻屋へ寄るはずだったのに、
もうこんな時間だ。
俺の私情で遮ってごめん。
さなが良ければまた、明日にでも寄らないか?」
さすがに、この時間には閉まっているな
そう呟き明日への変更を促すと
『はい!
じゃあ、また明日の放課後に。』
さなはニッコリと笑い返事をした。
そして、さなの家の方向へ向くと
「 あ、私のお家すぐなので大丈夫です。」
さなはまっすぐの方向へ指をさす。
……ーいつの間にかこんな所まで来てたんだな。
夏目は見慣れた景色に目を向け
「じゃあ、気をつけて。…また明日。」
とさなに別れを告げた。