第5章 ◆名取の札
「 …へ?
手…伝い…?」
いきなりの申し出に
呆気に取られるさなを目の前に
名取は表情を崩さず更に続けた。
「噂になってるよ、君のこと。
妖力の強い女子高生がいるってね。」
「名取さん、
そんな噂どこで収集したんです?」
さなの手を離さない名取の間に
夏目が割って入り、さなを背中に庇うと
疑いの眼差しを名取に向けた。
「夏目を敵に回したくはないが、
ギャラリーの居るここでは話しづらいな。
場所を変えようか?」
……ー嫌な予感しかしない…。
そもそも、ギャラリーが居るのは貴方のせいだろ。
ニヤリと笑い提案する名取を前に
不信感を抱かざるを得ない夏目は
「名取さんの仕事にさなは関係ないでしょう?」
そう言い切ると素早くさなの手を取り
名取とは反対の方向へ歩き出した。
「 えっ、ちょっと、夏目先輩??」
さなにとっては訳のわからない展開に
戸惑いながらも、
夏目に半ば引き摺られるようにして
その場を後にした。
……ーいいのかな…。
さなは名取が気になり後ろを向くと
名取は笑顔を崩さずこちらを見ながら口を開いた。
「じゃ、また後で。」
声は聞こえずも
さなにはしっかりと届いていたその言葉が
後々の事態を予告していた。