第5章 ◆名取の札
「すまないね、夏目。
このキラめきは生まれ持ったものだから。」
青年は夏目の嫌味にも
笑顔を一切崩さず答えると
はぁ、と溜息をこぼす夏目の隣に
ふと視線を向ける。
「この子は?
…夏目の彼女かい?」
一瞬、さなを見て真剣な表情になるも
すぐに元通りの笑顔を作り
からかい混じりに聞くと
視線を夏目に戻した。
「かっ、彼女だなんて、違います!」
予想外の質問に
夏目が隠しきれない動揺を見せると
一歩下がっていたさなが
すっと前に出る。
「 望月さなといいます。
夏目先輩と同じ高校の
1つ下の学年に当たります。
先輩にはお世話になっています。」
そうニコリと笑顔を見せ
軽い自己紹介を済ませた。
「夏目がそんなに動揺する必要があるのかい?
礼儀正しい子だね。
…私は俳優の名取周一。」
顔を紅潮させている夏目を横目に
名取はキラキラを全開に放出させながら
さなの目の前に立ち、
少し屈んだ姿勢でさなの両手を握ると
さなの顔を覗き込むように
自分の顔を一気に近づける。
「 ……っ?!」
いきなりの事に半歩下がり
肩を強張らせるさなを
そのままの笑顔で見据えながら
名取は静かに続けた。
「裏稼業で祓い屋をしている。
……君に手伝って欲しい。」