第5章 ◆名取の札
夕暮れの、少し気温が下がり
肌寒くなっている中を
2人は高さの違う肩を並べ
普通の高校生として他愛の無い話をしながら
寄り道をしていた頃、
嫌な予感を醸し出す風が2人を包んだ。
「あ……。」
ふと、目の前にヒラヒラと舞い降りる
掌サイズの紙人形を視野に捉えると
夏目はがっくりと肩を落とした。
「名取さんか…。」
ヒラヒラと舞う紙人形の降下先に
夏目が自分の手の平を受け皿に差し出すと
紙人形は綺麗に手の平の上に収まった。
その姿を終始見ていたさなが
夏目の手の平を覗き込む。
「これ、なんですか?」
明らかに、ただの紙ではないと察したさなが
そのまま頭に浮かんだ疑問を夏目に投げ掛けた。
「祓い屋だ。
…悪い人ではないよ。」
〝祓い屋〟という言葉に目を見開き
驚くさなを目の前にし
きっと会った事は無いのだろうと捉えた夏目は
補足をしながら説明に呈した。
……紙人形が俺に来るということは
近くに居るんだろう。
恐らく、ここでさなと別れても
すぐにさなが巻き添えを喰らうことに
なるのは想像できた。
夏目ははぁとため息を零し、
さなだけでも逃がしてやろうと
逃げる方法を頭の中で巡らせていると
「やあ、夏目。」
背後からキラキラとした挨拶が耳に入る。
その声とオーラに2人が振り向くと
そこには周囲の視線と黄色い声を独り占めにし、
2人に向けてひらひらと手を振る
ひとりの青年の姿があった。
「あの…、先輩の…、
お、お知り合いですか?」
田んぼのど真ん中にはかなり不釣り合いな
そのキラキラとした青年にさなは
少し狼狽えながら夏目を見上げる。
「あぁ、不覚にも…。」
そう返答する夏目に
先輩は顔が広いんですね。と苦笑しながら
さなが言うと
夏目は目の前まで来たその青年をしっかりと見据え
「名取さん、とりあえず
そのキラキラ何とかしてください。
目立って迷惑です。」
ビシリ、と言い切った。