第18章 ◆柴田ノ恋
「ハァハァッ、、!
よし、これくらいなら行けるか・・・。」
額に滲む汗を手の甲で拭い
少し乱れた息を整えて夏目は立ち上がった。
「なんだってんだよ
ちゃんと説明してくれ、夏目。」
息が上がる夏目とは反対に
なんの変化も無く地面を掘り起こしていた柴田が
文句混じりに夏目の横へ立った。
「あぁ、
さなには通れて、俺達には通れなかった
男女の差、だよ。」
夏目はそう言って
掘り起こしていない地面から
30cm程の高さに手をやった。
「これくらいまでの高さなら、
下を通れるみたいなんだ。
結界と言っても、結構不完全で
地面から30cmくらいはまだ結びついてなくて
開いてるんだよ。
ほら、
さなは俺たちよりも全然小柄だし
亀妖に引き摺られて出てきたって言ってただろ?
だから結界から抜けることが出来たんだ。」
手に付いた土をパンパンと払いながら
夏目は柴田に向き直った。
柴田は夏目の説明を腕を組みながら聞いていた。
「なるほどな、
その原理で俺たちが通れるくらいの
スペースを掘ったって訳か。
まぁ、、なんつうか、かなり原始的だよな。」
「原始的?」
「結界って聞くともっとこう、
呪術みたいなもんで
打ち破ったりするイメージだったからさ。」
ハハッと軽く笑って頭を掻く柴田を前に
夏目も同じように笑った。
「あぁ、
そういうのは払い屋の仕事だから。」
「・・・
は、払い屋、ねぇ・・・。
へぇ〜・・・。」
至極爽やかに答える夏目だったが、
サラッと出てきた少し物騒な職種に
柴田の笑いは途端に苦しいものとなった。
ー・・・相当 苦労してんだな、夏目。