第18章 ◆柴田ノ恋
「さてと、
じゃあ行くか。」
掘り起こした穴の前で
柴田は柏を打ち意気込んだ。
「そうだな。
柴田、俺が先に行くよ。
もし、危険なら柴田はー」
「〝来るな〟なんて言葉は聞かないぜ?」
夏目の心配も他所に、
柴田は夏目の言葉を最後まで聞かずに
ニカっと笑って親指を立てた。
ー過去に田沼の寺で
夏目が妖を見たという話をしただけで
シャワーを浴びに行く事さえ怖がっていた
あの柴田だが、
今回はそういった怖がる素振りを一切見せない。
むしろ、自信があるのか
夏目が見上げる柴田の少し垂れた大きめの瞳には
何の迷いも無いように見える。
「・・・柴田は怖くないのか?」
思わず零れた夏目の疑問。
零した後に
しまった と少し焦った夏目だったが、
「怖いに決まってんだろ。
・・・けど、さなちゃんが待ってるんだぞ。
怖がってられるかよ。
さっさと妖怪倒して戻らねーと
変な虫がさなちゃんに付いちまうだろ?」
柴田はハッキリと言い切った。
ーあぁ、そういう事か。
大切な誰かを、時間を、守りたい。
その想いは夏目自身がずっと抱いていた。
対象が何であれ
同じ想いを今柴田が感じている。
それはとても柴田らしいかっこよさだった。
その言葉に納得した夏目は
ふっと笑みを零して
穴の前へしゃがんだ。
「後悔はなしだぞ。」
「当たり前だ。」
二人の掛け合いが為されたと同時に
二人は穴をくぐった。
「狭っ!」
柴田の声が大きく響きながら。