第18章 ◆柴田ノ恋
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「 夏目、この洞窟か?」
「 ・・・あぁ。」
青い顔をした柴田を横に
短く返事をする夏目。
先程嫌な気がするとさなを置いて
柴田と二人で駆け上がるようにして登ってきた山。
気配だけを頼りに着いたその先は
奥が真っ暗闇に塗り潰された大きな洞窟だった。
ここは小さな集落だ。
この山も何度も登ったことがある夏目だが、
果たして
こんな所にこんなにも目立つ洞窟が
あっただろうか?
周知されているならば、
学生たちの噂になる事は間違いないだろう。
しかし、聞いたことも見た事もない。
ー・・・これも、亀妖が言っていた
あのお方?と呼ばれていた妖の仕業
かもしれないな。
それにしても、、
「 でっけぇ洞窟だな?
中に神様でも居るのか?」
妖の仕業にしては
そういう類の物は見えない柴田が
しっかりと見えているらしい。
「 なぁ、柴田。」
「なんだ?」
夏目はふと感じていた疑問を
柴田にぶつける事にした。
「 さっき、
さなが言っていた“ 亀さん”って
柴田には見えていたか?」
真っ直ぐに届く夏目の視線。
その視線を受け流すよう、
何処か言いづらそうに柴田は顔を背けた。
そして、
「 いや、
実は見えてない。
ちっこい何かが居るのかと思って
何も言わなかった。」
ちっこいからな!大丈夫、
そう付け加えて柴田は笑って振り向いた。
「 そうか、ありがとう。
じゃあ、中へ行くぞ。」
「 お、おう。」
夏目やさなの妖力に当てられて
柴田にも一時的に妖が見えるように
なったのかもしれない。
夏目のその推測は外れていた。
代わりに、
亀妖の非ではない妖力を持った妖が
この洞窟に居るらしい事実を得た。
柴田を連れていくのはまずいか?
そんな疑問が一瞬夏目の脳内に過ぎったが
きっとそれを望んでいない柴田へ
一声掛ける事で夏目はぐっと堪えた。